HONDA フォルツァMF08のエンストする症状・不具合についてまとめ
この記事では、以前フードデリバリーの事業用バイクとして登録し使用していたバイクHONDA フォルツァZ MF08のエンジンストール症状や、その他の不具合についてまとめていきます。今現在、不具合が起こっているものの、故障原因が特定できていない方に向けて、なんらかの参考になると思います。故障原因がわからずweb検索した時に、複数ページに至ると検索が面倒になるため(自分がそうでした)、この記事に集約していきます。後に加筆修正を予告なく行う場合もあります。先に結論を言うとフォルツァZ MF08は後悔するので買わないことをおすすめします。基本的な私個人の考えは「リコールが必要だったバイク」であり、手を出すべきではありません。そのため、長文となりますが、ご了承ください。
フォルツァの概要
まず、概要を述べます。他のホンダのバイクならば、概要はおそらく不要ですが、ホンダの中でこんなに不具合の発生するバイクは他にない、スクーターなのにエンストするのは怖いなと実感するため、丁寧に不具合の説明の前提として機構を記載します。
私のフォルツァは中古で走行距離3万km程度で購入しました。スマートキーが赤いフォルツァスペシャル・フォルツァZという販売のされかたをしていたバイクだと思います。フォルツァMF08の特徴として、他のスクーターとの大きな違いは、「ホンダSマチック」という機構が組み込まれている点です。フォルツァXは、他のスクーターと同様にウェイトローラーの遠心力で変速する機構ですが、フォルツァZは、ホンダSマチック機構がついており、ウェイトローラーは組み込まれていません。「ホンダSマチック」とは、電子制御によって自動変速モードと、マニュアルモードの選択が可能なシステムです。マニュアルモードでは、ハンドル右側のスイッチによって、任意にシフトアップ、シフトダウンすることが可能で、確か6速か7速まで段階変速が可能だったと記憶しております。
前バージョンのMF06からの変更点は、外観の違いを除くと上記「ホンダSマチック」の搭載と、燃料噴射機構が「キャブレター」から「フューエルインジェクション(FI)」に変更されたことです。先に結論めいたことを記載すると、壊れる・不具合の原因になるのは上記2点です。笑 それを以下ぶつぶつと経緯、故障特定に至った思考を記載していくのみになります。
スクーター変速の仕組み
まず、スクーター変速の仕組みを記載しますが、理解している方は読み飛ばしてください。私は、フォルツァの故障が多すぎて、こんなことまで知識を得ることになりました。
スクーターの変速及び駆動力の車輪への伝達はゴムベルトにより行われています。スクーターの場合はゴムVベルトが使用されています。そして、部品として主に、プーリーがエンジン側及び車輪側に2点あり、エンジン側のプーリー内部にウェイトローラーがあり、車輪側プーリーにはクラッチシューが接続されており、車輪にはクラッチアウターが接続されています。上記のアニメーションでは、左側をエンジン側とみるとわかりやすいです。ウェイトローラーとは読んで字のごとく錘の役割を果たすローラーとなっており、回転数に応じた遠心力の大小により、例えばエンジン回転数を上げるとプーリーの径中心から、外側に向かって遠心力が働き、ウェイトローラーがその自重に働いた遠心力によりプーリー外側へ動き、これによりエンジン側プーリーはVベルトを挟み込む様に動作します。
さて、ここでVベルトは円周が決まって固定されております。よって、エンジン側プーリーによって挟み込まれ、エンジン側プーリーの外径に寄るように押し出されたVベルトは、同時に車輪側プーリーをベルトが押すようにして広げることになります。これは、くり返しますが、Vベルトの円周が固定であることを利用しています。この動きにより、エンジンの回転をベルトで伝えつつ、今度はタイヤ側のプーリーが回転することによって、その遠心力及びプーリーが押し広げられることによりクラッチシューが外径側に広がり、車輪に接続されているクラッチアウターに接触します。これでようやくタイヤに回転力を伝達します。スクーターは基本的にこのくり返しを行っています。エンジン回転数を下げれば、すなわち、変速機構全体の遠心力を下げることにつながり、クラッチシューとクラッチアウターとの接触が解放されることになります。スクーターが任意のタイミングでクラッチを切ることが出来ないのはこの機構(遠心力による)ためです。
長々と説明しましたが、走行中スクーターでエンストしたらどうするか、フォルツァ乗りの方は想定しておきましょう。
なお、蛇足ですが上記の知識で鉄道の列車がなぜ台車が動くわけでもない(最近は操舵台車の導入もあるが)のにカーブを曲がることができるのかという問いに答えることができます。列車の車輪は外側に行くにつれて、言わばスクーターのプーリーのように外径が小さくなっているのは一般の方でもご存知かと思います。スクーターの場合は固定された物体がベルトであるのに対して、列車は車輪の軸が固定されているという対応関係をおくことができます。スクーターはウェイトローラーが遠心力を受けますが、列車はレールのカーブによる遠心力を車体で受けることになり、ここにも対応関係を置くことができます。 つまり、鉄道では車輪の円周の違いを利用して、同じ回転数でも左右の進む距離に違いを生み出してカーブをスムーズに曲がっているわけです。
フォルツァZ MF08 変速の仕組み : Sマチック
さて、上記の説明とまったく同じ機構で、フォルツァMF06/フォルツァX MF08は動いています。対して、MF08のフォルツァZ及びMF10はこれから説明する「ホンダSマチック」を使用し、ホンダは世界初の電子制御ベルト式CVTシステムを確立しました。これが世界初の厄介のもとなのですが。笑
上記の説明で、エンジン側プーリーがウェイトローラーの動きによって動作することで変速が可能になるのでした。「ホンダSマチック(以下Sマチックと記載)」は、このウェイトローラーを排して、エンジン側プーリーを、言わば直接にモーターの力でギヤを介して広げたり狭めたりする機構です。
ここで言うギヤは変速ギヤではありません。ただのモーターの力を伝達する歯車のことです。Sマチック車(二輪)のプーリーはギアに対して螺旋状に、回転に従ってプーリーが広がったり狭まったりする機構がついています。クラッチ側(車輪側)の機構に従来型のスクーターとの違いはありません。あくまでエンジン側プーリーの制御方法が電子化されているに過ぎません。Sマチックの機構的には「スロットル開度」「車速」「エンジン回転数」「プーリー位置」「ドリブンプーリー回転数」「FIモード信号」「モード・チェンジ信号」を判断要素として、“レシオコントロールユニット”に情報を集約しています。
なんのことやら、わけがわかりませんね。笑 つまり、プーリーを制御をするためのモーター(これをホンダはレシオモーターと呼んでいます)をどのように動かすかを判断・制御するための信号を入出力するコンピュータがあり、それが「レシオコントロールユニット」と呼ばれています。
この辺りでもう付いて来れない方は、基本的にフォルツァZは中古で買わないことをお勧めします。電子制御もりもりバイクは避けた方が良いです。
フォルツァZ MF08の燃料噴射 : フューエルインジェクション
さて、もう一つの不具合が頻繁に起こる部分について、まずは仕組みから説明します。2000年代に入ったあたりからだと思いますが、キャブレターからフューエルインジェクションへの変更の波がバイクにも押し寄せてきたと思います。フューエルインジェクションの仕組みそのものは、燃料ポンプによって燃料を吸い上げ、その燃料経路を圧力がかかった状態にしておき、インジェクターを開けるか閉めるかといった単純なものです。これは、火災時に動作するスプリンクラー等も同じ機構のものがあります。しかし、これを電子制御することが可能になったことにより、例えば暖機を自動で行ったり、燃料噴射モードの選択を行えたり、燃費を安定的に向上させたりできるようになりました。フォルツァMF08の場合、そのインジェクター制御の信号を送るコンピュータ(以下、ECUと記載)が、スロットルボディと一体(スロットルボディASSY)になっており、分解が不能になっています。
スロットルボディとは、ハンドル手元のスロットルの開度によって空気吸入経路を開け閉めし、上記インジェクターからの燃料と混合空気を作る部位のことです。フォルツァMF08では、このスロットル開度の調整は、電子制御ではなく、自転車のブレーキワイヤーのごとくスロットルーワイヤーでつながっています。しかし、そのワイヤーでどのくらいのスロットル開度を行っているかを判定する機構がスロットルセンサとしてECUに組み込まれています。いや、正確には組み込まれているはずです。これはECUが分解不能なのでブラックボックス化され難しいのですが、スロットルボディ接続端子の左上1番ピンと、そこから右に2ピン行った、左上3番ピンの抵抗を確認することで、おそらくはそういう機構が組み込まれているだろうという予測ができます。スロットルボディを取り外し、スロットルを手で開けながら抵抗値を見ると開度にしたがって抵抗が変化することが確認できるはずです。しかし、基準値がわからないのです。このスロットルセンサーが、故障ポイントだと推定しておりますが、詳しくは後述します。
フォルツァZ MF08の燃料ポンプサービスキャンペーン
フェルツァmf08はサービスキャンペーンがひとつ(ほかにも直さなきゃいけなかったはずだが)出ています。
燃料ポンプ内の樹脂製インペラ(燃料を圧送する羽根車)の材質が不適切なため、燃料により膨潤したインペラが内部で干渉するものがある。そのため、エンジン始動時にインペラ干渉部の抵抗が大きくなって燃料ポンプが起動せず、エンジンが始動できなくなるおそれがある。
https://www.honda.co.jp/recall/motor/campaign/080708.html 「不具合の内容」より引用
フォルツァは燃料ポンプのサービスキャンペーンが実施されておりますが、実施済みの場合には、サイドスタンドの根本(車台)に「KB-11」というシールが貼られます。私のフォルツァは燃料ポンプ交換済みの車体でした。
不具合発生経緯・概況
さて、本題の不具合発生の経緯を記載します。症状は「エンスト」または、「エンジンが始動できない」です。
中古でフォルツァを購入して3週間くらい、2000kmほど走ったころから、時速60kmくらいで巡行していた際に、ガクっとせき込むかのようにエンジンブレーキがかかりました。その日はその症状1回のみで、翌日フードデリバリーの配達を行っていた際に、信号待ちで停車中に、今度は「カシュン」という音がして、エンジンが止まりました。その時は、一旦歩道にバイクを入れさせていただき、1分後くらいに再始動したら普通にエンジンがかかりましたが、その日にうちに、やはり時速60kmくらいで巡行時にせき込むような症状が頻繁に表れるようになりました。
そのさらに翌日も、信号待ちや、右左折時にアイドリング回転数(mf08の基準値は1500rpm±100です)くらいまで速度を落とすと、エンストするようになってしまいました。危険ですが、エンストするのが恐怖だったので、エンジンを軽く吹かしながら、2000rpm程度を維持しつつ、ブレーキで速度を調整するようにして帰宅しました。ここから、なんだかんだで4000kmくらいは走ったと思います。そのうち、上記のエンストが発生すると、再始動が困難になるようになりました。ここから地獄のような原因探り(自己責任ですが、そのバイクを事業用に使っていたため)の日々が始まりました。
ちなみに、私がこれリコールが必要だろと思い始めたのは、一時レインボーブリッジ走行中にエンストしたことがあるためです。後続車がいなかったため、助かりましたが、走行中エンストするだけでもかなり恐怖なのに、退避できない箇所でも構わず故障は発生するため、ホンダはリコールが必要なのではないかと思いつつ、特に問い合わせ等は行いませんでした。(youtubeで、問い合わせが無駄ってのを見たこともあります。)
原因の調査・仮説を立てる
さて、上記の状況からは、一旦エンストすると数時間再始動できないというのがざらでした。さらに日に日に症状が悪化し、ついに、始動したら5秒くらいでエンストする状態に陥り再始動不能になる状態でした。セルモーターやスターターリレーには異常はありません。電圧もしっかり出ています。これ以降の記載は上記のエンスト症状が出てからすぐに開始したものであり、最悪の状態まで待ってから実施したものではありません。まずは、点火プラグ交換を行いました。改善しません。次にインジェクターを疑いました。ここにゴミが詰まっていると、燃料噴射に影響があるからです。しかし、症状は改善しませんでした。次に、エアクリーナーを交換しました。症状改善なし。
ちなみにこれも蛇足ですが、フォルツァmf08はもはや売却しても二束三文にもならずロードバイクの方が高いくらいなので、私は売却をあきらめて、メットインに切り込みを入れ、スロットルボディほか、エンジンに直接アクセスできるようにしてしまいました。ブログでは簡単そうに書いていますが、このメットインを取り外す作業は素人なら3時間はかかると思われ、単純にバイク屋でもその時間・手数は変わらないため、外装を外すだけで2万円程度料金がかかるのは見込んだ方がよいです。これが故障のたびに起こることを考えれば、買ってはいけないバイクだということがわかるかと思います。以来、私は自我を保つためスクーターのことが嫌いになってしまいました。笑
次に、スロットルボディの清掃を行いました。その時はまだECUがダメなんだと気づいておらず、クリーナーで清掃を行いました。ただ、そんなに煤で汚れている感じではなかったため、一瞬でこれが原因じゃないなとは思いましたが、原因を潰す目的で清掃は実施しました。症状改善せず。
さて次に、ついに燃料ポンプの交換まで行いました。これは非常に大変でした。一旦ガソリンを抜かなければいけないのですが、上記のように始動できない、始動してもエンストする状態だったため、手動ポンプでガソリンを抜く、しかも、上記のメットインを外す作業は必須となります。結局メットインを外すのが一番大変でした。ポンプ交換はそんなに難しくありません。症状改善せず。
手詰まりかと思われましたが、再度落ち着いて仮説を立てます。
- プラグ交換した、新品
- エアクリーナー交換した、新品
- インジェクター清掃した、噴霧問題なし
- スロットルボディ清掃した、きれい
- 燃料ポンプ交換した、新品
このように考えると、(1)混合吸気問題なし。(2)点火問題なし。(3)別途調査したが、クランクに抵抗があるので、圧縮問題なし。と判定でき、燃料ポンプを交換したものの、燃料系統の何かが異常なんだ、そうとしか考えられないと仮説を立てました。
インジェクターは問題ない、燃料ポンプは問題ない、よって、燃料噴射を行う制御系統に問題がある。と考えました。ここで、MF08の配線図をネットで見つけて(著作権とかあるのでここでは掲載できません)、結局はスロットルボディASSYになって付随しているECUに集約されていることを知ります。というか、配線・カプラを外さないとスロットルボディASSYは外せないので、スロットルボディASSYをはずしてクリーニングしたタイミングでECUが怪しいとは思っていたのですが、根拠が消去法以外にありませんでした。実は、スロットルボディASSYは、その時の価格で新品が5万3千円もしたので、パッと交換できるものではありませんでした。また、「日に日に症状が悪化する」というのは何らかの位置のずれ、消耗、劣化等、鉄道会社で以前働いていた私には、ECUの不具合であるという実感がなく(そういう不具合は経験上突然死するからです)、判断を遅らせた原因でもあります。
そんな時mf08の修理ブログを見ていたら、「完全暖機時にエンストするという謎の症状」という趣旨の記載があり、まさに私のフォルツァも同じ症状であったため、スロットルボディASSYをまずは中古で購入することを決意しました。1万円くらいでメルカリで購入しました。実は、エンスト症状は初期の頃は、水温計がちょうど真ん中、完全に暖機したタイミングで何故かエンストする、というものであり、だんだんとそれよりも前でもランダムにエンストするようになり、発狂しそうになっていたのです。その時に撮影したものが下記のYouTubeなわけです。後に、スロットルボディASSY交換で完全に症状が消えたため、このようなタイトルにしていました。
しかし、このとき交換を実施したメルカリ版のスロットルボディASSYも、交換から1万kmほど走った際に、同じように、せき込むようなエンジンブレーキ症状が出始め、信号待ちでもエンストするようになったため、さらにもう一つスロットルボディASSYを購入しました。すぐ改善しました。よって、この症状は普遍性があり、私の予想でしかありませんが、スロットルボディ本体又はECUが、内部でスロットルセンサーの位置が狂い始め(おそらく抵抗値が狂う)ると、当然スロットル開度がどのような状態かコンピュータが判定できず、しかし、判定できないスロットル開度とは裏腹に現実の乗車者が操作するスロットルは開閉されており、最適なタイミングでのインジェクターからの燃料噴射を行えなくなったことがこのエンスト不具合の原因ではないかと思います。実は走行中のエンストは、いきなりエンストするのではなく、スロットルを開放しているにも関わらず燃料噴射が行われていないが如く全く駆動力を失いエンストするというものでありました。こう考えれば、信号待ちなど、「アイドリングで」エンストする原因も説明がつきますし、走行中に咳き込むようなエンジンブレーキがかかることも、スロットル開度に対して燃料が一瞬噴霧されないと考えれば説明がつきます。
よって、私個人としてはスロットルセンサーの不具合と断定しました。そして、そこから導かれる予想ですが、ホンダは、このエンストは「燃料ポンプによるものだ」として、燃料ポンプのサービスキャンペーンを実施しましたが、読み誤っているか故意かは存じ上げませんが、スロットルボディASSYのリコールは実施しませんでした。これが、どのような意図かは不明ですが、新しいスロットルボディASSYであればあるほど、上記のエンストは発生しずらい実感があり、かなり故意よりにしれっと原因を改修したのではないかとすら疑ってしまいたくなります。
なお、スロットルセンサーだけを調整する方法があるのかどうかについては、私は存じ上げません。
スロットルボディASSY不具合の特徴まとめ
さて、一応断定まで非常に苦労したので、まとめておきます。下記に記載の内容の私の場合とすべて同じとは限りませんが、mf08で「エンスト」という不具合がでたら、スロットルボディASSYを疑ってみてください。
(1)完全暖機時にエンストする
(2)FIランプ、Fコードの点滅は無し
(3)信号待ち、右左折待ち等、アイドリング回転数が安定しない、エンストする
(4)アイドリング回転数が一定にならない(暖機しているのに)
(5)スロットルを開けても加速せず、スロットルを戻すとエンストする(この場合確実にエンストします)
(6)駆動部の不具合がない(クラッチシューの異常摩耗やベルトの亀裂等)
一旦ここまでで、中途半端ではございますが、記事を公開し、その他のmf08で起こりがちな不具合(主にレシオコントロールユニットやレシオモーター、すなわちSマチック機構)については加筆していきます。何卒よろしくお願い申し上げます。
ここまで、駄文をお読みいただきありがとうございました。ではまた。