郵便局を退職しました
郵便局を退職しましたので、記録として残しておきたいと思います。
私は期間雇用で集配、すなわち、赤いバイクに乗って郵便を届ける仕事をしておりました。
個人的な情報を開示すると特定されてしまう可能性が高いので、現場で感じた郵便局の問題点のみを記載します。
転居届に関しての問題
特に若い方に多い傾向があるが、転居したのちに「郵便局へ(webでも可)」転居届を出さない方が特に増えていると感じる。さらに限定するならば、高校を卒業し大学受験を終え大学近くに転居する学生さんに多い。これはまだ自分から社会的な手続きをこなしていくことに慣れていない面もあるかとは思う。ただ、学生さんではないと見受けられる方の転居後の転居不届けも多く、おそらくだが転居者は役所への転入手続きが済めば、勝手に新住所に郵便が届くものと思っているのではないだろうか?と感じざるを得ない。
郵便局が独占で配達ができる郵便物は「信書」と呼ばれ、特定の受取人に対し差出人の意思や事実を通知する目的で宛てた文書をいう。したがって、転居者がその部屋に転居し、ガスや水道の郵便(すなわち生活を始めたことが推定はできる)が郵便局に到着したからといって、郵便局で把握している居住者と受取人が異なる氏名の場合、勝手に配達していいものではない。
転居者はその家に住み始め新生活を始めているため、そもそも郵便が届かない意味がよくわかっていない場合が多い。郵便局では転居届でしか「基本的には」居住者の情報を知り得ないため、旧住人も新居人も転居届を出していない場合、そこには旧住人が住んでいる、という認識しか持ちようがない。しかし、郵便局はそのアナウンスが下手くそなので、転居した際に郵便局にも転居の手続きをしなければ郵便は届かないということを知っている方が少ない印象を受ける。これはおそらくインターネットの発達が関与していると思う。昔は、メールアドレスの変更を連絡先全員にお知らせしないと一生新アドレスにメールが届かなかったが、今若者の間ではキャリアメールすらほぼ使用されていないのではないだろうか。したがって、このアナロジーが適用できない。
もちろん、転居届の定義から「過去の住所から新住所への転送を希望しない」場合もあるだろうが、「その新住所に居住している事実のみを郵便局に告知する」その手続きが定められていないのだ。それはある意味では社会が、ホームレスやアドレスホッパーなどを想定していなかった名残とも言えるであろう。基本的には皆、住民台帳に記載のある者しか、そしてその住所でしかこの国の国民は生きていないはずである、と。
転居者側からすれば転居届は、「旧住所から新住所へ郵便を届けるためのもの」という認識が一般的であろうが、郵便局の現場の人間からすれば、「新住所に誰が本当に住んでいるのか」を知れるという代物であり、ではなぜ転居届を出していない人のもとに郵便が届くのかといえば、郵便局の現場の個人的判断と現地確認の労力によるところが大きい。これは労務費材料費1円の収益にもなりはしないどころかガソリンを消費し、局員の労務費も消費する赤字作業である。収益性の高い荷物の受注増勧奨が叫ばれる昨今、このような無駄な労力は削減すべきであると考える。そのためには、アナウンス・広告の方法を考えるべきである。
郵便局限定の手書き不在通知書問題
皆さんは不在通知書というものをお受け取りになったことがあるだろうか。この「不在通知書」は荷物を置き配もできず宅配ボックスにも入れられないものをお届けしたい場合に、お客様が不在であると、配達に来た旨を知らせ、また保管している旨を知らせるために投函するものである。
この不在通知を受け取った時、ヤマト運輸殿と日本郵便の不在通知を見比べてみていただきたいが、ヤマト運輸殿の不在通知は個人情報・荷物情報が基本的には印字シール1枚であるのに対し、日本郵便の不在通知は受取人・差出人・郵便物の種類・お客様の郵便番号(親切な郵便局員の場合は書いている場合が多い)まで全て手書きなのである。そしてシールに印字されるのは荷物の追跡番号と保管期限のみである。
実は郵便配達で一番効率を落としているのが、この不在通知書を記載している時間である。よく退職検討理由で郵便局の残業時間締め付けが厳しいなどと目にするが、このような非効率極まりない作業をいくつも改善せずに放置したまま、残業時間を締め付け配達を終わらせろと言われれば、無理ゲーであり退職して当然であると思う。
さらに面白いのが、手書きによってお客様のお名前を一文字間違えて投函した日には烈火の如く苦情が来ることである。それは果たして間違える人間が悪いのか、古いシステムの郵便局が悪いのか。私は完全に後者だと考えているが、とりあえずは局員個人が叱られて終わりとなる悲しい現実がある。
置き配問題:個人的なお願いVer
郵便局でも置き配は可能であるが、あらかじめ「指定場所配達の申請」をしていなければ、基本的に置き配はできない。これは簡単にいうと保身のためである。個人的には、オートロックのマンションで勝手に突破されて置き配されたら苦情を入れる気持ちもわからなくはないが、そんな設備がない階段続きのお客様宅において、不在の場合に勝手に置き配をされそれに対して苦情を入れるお客様というのはかなり存在することに驚く。郵便局は保守的な体質もあって苦情を嫌がる傾向がかなり強いと思う。これにより現場の配達員は置き配は基本NGという思想に取り憑かれている。
よく、Amazonなどで購入できる「置き配OK」などの札がドアノブにぶら下がっている場合も、さらには大きな攻撃的な字で「置き配!」とだけ書かれている場合も置き配はできない。「配達ありがとうございます。置き配お願いします。」と書く者もいる。これはシーケンス的にはただの個人的なお願いであって、「指定場所配達の申請」がなされていないので、郵便局員は不在通知をポストに入れて持ち戻らなければならない。しかも不在通知書は上述のとおり手書きである。もうアホかと。私自身は精神的にこれが結構きつかった。「置き配しろって書いてあるだろ」といつ苦情が来るかもわかないが、果たしてその時、郵便局は局員個人を「それは会社の方針であるから」と守ってくれるのだろうか?
私は、郵便局はそういった苦情があったとき、守ってくれないだろうなと推定し退職した。なぜなら、会社の方針は極力苦情をもらわないことだからだ。笑
つまり、強い正義的な思想があって置き配をNGとしているというよりは、苦情をもらわないことを主な目的としていると感じた。
また前述した通り郵便局は地域のお客様へのアナウンスが下手くそなので、そもそも「なぜ置き配してくれないのか?」とお客様は疑問に思うのではないだろうか。果たして、「指定場所配達の申請」をしなければ置き配ができないということをご存知のお客様はどのくらいいるのだろうか。上司や上長はそんなこと想像もしていないような雰囲気であり、他社経験もあり、中途で入ったばかりの私はかなり違和感を覚えたことを記憶している。「この郵便局の独自の仕組みをお客様は知っているんですか?」と。
私が危惧しているのは、置き配をしないことを基本としている郵便局が、収益性向上のため、ゆうパックの勧奨を強く進めていることである。増やしたゆうパックの荷物が全部不在だったらどうするんやろと思わざるを得ないが、退職した今となっては頑張ってくれとしか言いようがない。再配達はお客様から料金を取り始める未来が少し見える。
※置き配に関しては、Amazonやメルカリのプラットフォームにおいて、「指定場所ダイレクト」が設定されている場合は基本的にそれに従います。ただ、やはり保身のため、不在通知書にどこに差し置いたのか記載し、ポスト投函するため、特別に何かが楽になるわけではありません。
置き配問題:宅配ボックスVer
宅配ボックスがある受取人が不在の場合、宅配ボックスに荷物を差し置きすることがある。宅配ボックスも種類によって扱いが異なるので、微妙に時間を要するのは仕方がないとして、宅配ボックスに差し置いた後、現場の局員は何をするかというと、「不在通知書の記載」である。荷物の追跡番号とどのボックスに入れたのか、暗証番号は何かという情報はシールに印字されるが、またしてもその他は手書きである。つまり、お客様が不在であり宅配ボックスに差し置きする時間と、お客様が不在で不在通知書を記載する時間はほぼ変わらないのである。もちろん、荷物は差し置きすることができるので、再配達のコストを減らすことには貢献できるが、その分自身の郵便物の配達が遅くなるので、結果的に精神的に疲弊するのは現場の局員である。
不在通知書を投函しなくてもネットで個別番号を検索すればどのボックスに入れたかなどは見れるのだが、差出人が確実に個別番号を伝えているとも限らないし、インターネットネイティブではない世代にもそれを強いるのは厳しいだろう。やはり不在通知書は必要とは思うが、手書きだけは勘弁してくれと現場の郵便局員は思っているのではないか。
ちなみに先述の「指定場所配達の申請」がなされていても、基本動作としては不在通知書に指定された場所に差し置いた旨を記載しなければならない。不在通知書のシステムを改善しない限りは詰んでいるとしか言いようがない。
レターパックがポストに入らない問題
レターパックは基本的にお客様宅のドアポストには折らないと入らない。これはドアポスト設計者がアホなのか、レターパックというサービス設計者がアホなのか、いずれもアホなのかは定かではないが、事実としてレターパックがドアポストにそのまま投函できないというバグが存在する。地方に行くと、なんと郵便局の赤いポストにすら入らない例があるというから驚きのサービスである。これらはいずれもレターパックライト(青色のもの)お話である。なお、レターパックプラスは基本的に対面受け取りなので、不在であれば基本的には不在通知書を書いて投函することになる。しかし、赤いレターパックプラスは厚みに制限がないため、上記のレターパックライトすら入らない地方の郵便局ポストにレターパックプラスを投函できる日は永遠に来ない。
そして、上述の通り、郵便局はお客様からの苦情を非常に恐れているため、同様に局員もそれを恐れる結果、大量のレターパックの持ち戻り・再配達が行われている現実がある。
個人的にはサービスの設計という意味で、郵便局で働いていてレターパックが一番失敗しているサービスなのではないかと思った。現場で配達をしている局員ならば知っているはずだが、仮に無理矢理にでも配達しようものなら、雨の日にはふにゃふにゃになり、少しでもポストや二輪のボックスの角に引っ掛けるとブリブリに破けて、苦情どころの騒ぎではなくなってしまうのだ。民営化後、多少営利目的のサービスを設計するのも理解できなくはないものの、あまりに現場の状況を知らない、配達をしたこともない者が考えそうなサービスではあると思う。果たしてこれは「レター」なのか、と哲学的な領域に入る日はそう遠くはない。
人員不足問題
これは誰もが口にすることであるが、人員が不足していることは間違いない。特定を避けるために濁すが、配達エリアを均等割し、一人1エリアを担当し郵便を配達するのが郵便局員の仕事であるが、そもそも班(担当エリアが複数からなる集団)の中で、通常のシフトで複数エリアの担当がいない、ということが日常茶飯事であった。
つまり、「自分の担当エリアの配達が終わらない」というレベル感の話ではなく、「自分の配達エリアすら終わらないのにまだ配り始めてすらいないエリアが存在する」というレベル感の話が、日常となっている。ホステスで言えば、男性客だけが座っているテーブルが複数存在するが、とりあえず水しか出していない、というイメージである。
これでインフルやコロナが蔓延し、一人でも欠けたら「終わる」ことを意味しているし、そもそもそんなこと言っている時点でもう破綻していることは誰もが気づいている。
さらに最悪なのは、それにより「新人教育」をしている余裕がない、ということであろう。よって、中途で入った期間雇用社員はおよそ8割が3年以内に退職するという結果になる。郵便局の配達部門の期間雇用社員というのは時給制で働くバイトと変わらないが、時給を上げるには新しいエリアを覚えていくこと以外にない。したがって、人員不足の状況では新しいエリアを覚えさせてもらう(これを通区という)ことが不能な状況になり、期間雇用社員の時給は上がらず、ただただ上述までの辛い日々を安い時給で繰り返すことになる。
これは私の体験談だが、やっと通区訓練(そのエリアを熟知している上司の後ろをバイクで走る)をさせてもらえた翌日、いつも私が担当しているエリアに入った上司から「礼はないのか」とキレられたことがある。つまり、お前の時給を上げるために周りが負担を強いられているのに挨拶はないのか、という意味である。私は色々と理由をつけはしたが、結局はこれがきっかけとなり退職を申し出た。新人教育・育成を負担と感じているような職場はやがて滅びるであろう。
しかも、新しいエリアを覚えたところで、その評価は半年に一回であるので、運が悪いと半年間まるまる「複数エリアを配達するスキルはあるのに1エリア分しか配達できない者と同等の給料」で働かされることになる。正社員はこれを知る由もないので、複数エリアを配達する前提で計画を組んでくる。正直、辞めて当然かと思う。なぜなら、見合うお給料を頂いていないので。ちなみに私は時給1,0⚪︎0円であった。コンビニバイトしていた方がましである。
紙ベース問題
郵便局は基本的にはITと相反する部分があることは間違いない。その諸々の思想が、紙をベースに何かを処理しようという行動に現れている。
私が特に指摘したいのは、「配達原簿」である。これは一般の方には馴染みがないだろうが、どこに誰が住んでいるか?が住所ごとに記載されている紙で、配達員は毎日それを見ながら、郵便を道順通りに組み立てる。つまり、データベースがそのまま紙に印刷されているようなものを想像してほしい。
毎年引っ越しのシーズンになると、一番最初の項で述べた転居届が大量に出され、編集し印刷された(印刷自体は事務の方がやってくれる)配達原簿を差し替える、という作業が発生する。
私は入社してすぐに、研修センターでこの配達原簿の見方と道順組み立ての方法を伺った時、「なんでタブレットを1枚も配らないのだろう」と思った。転居届が提出され確認がなされると、それはデータベースに登録される。それら登録情報をサーバーから直でタブレットに呼び出した方が効率的であるし、紙ベースのために発生する無駄な差し替え作業も印刷代も削減できる。この無駄な差し替え作業は意外に時間を要するもので、引っ越しシーズンでは30分ー1時間ほどかかることもある。これらを削減すれば、安いタブレット1枚くらい簡単に買えそうなものである。
また、一般の方は想像し辛いだろうが、配達原簿は硬いクリアケースに挟む仕様のことが多く、稀にその間に郵便が挟まり残留するというインシデントが発生する。これらはすべて紙ベースで配達原簿を管理しようとすることから始まっているであろう。タブレットを1枚配れば済む話である。
マニュアルが存在しない
これも中途で入るとなかなか驚くことであるが、郵便局はいろいろな処理を紙ベースで処理する割にはマニュアルが皆無といっていい。
上述のように、新人教育を負担と感じているほど人員不足ならば、少々の痛手を伴っても、それを読めば誰もが作業が遂行できるようマニュアルを作成すべきだと思うが、そう考える上司は一人もいない。
これは偏見も少々入るが現場の郵便局員は文章が読めない人が多いと思う。長い文章を与えられると、考えることを放棄して「ああ面倒くせ」となりがちだと間違いなく感じる。この辺りの態度が、マニュアルを作成していない、または、その作成が必要だと想像すらできない根本的な思想に繋がっていると感じる。聞けば早いだろ、というわけである。これはすなわち文章で他人に作業内容を指示できないことを意味しているのではないか。太宰治風に書けば、無教養だ。エゴだ。だからもう、よした。
多くのベテラン社員は聞けば教えてくれるが、一部人員不足のため自分のエリアの配達を終わらせることに必死なためか、毎日毎日かなり機嫌が悪い人も多い。そして、いずれにせよベテランに聞かないとわからないことなどほとんどなく、マニュアルに書いておけば済むような話が非常に多い。例えば、現金管理機の使用方法や調書の印刷方法など、細かい部分ではあるが、単純なものである。しかし、この単純な作業も、どんなに頭が良く優秀な人でも、「聞かないとわからない」状況になっている。
マニュアルの作成は急務である。
郵便局の最大の問題
郵便局の最大の問題は、「日々の業務を改善しよう」という意思が完全に折られていることである。私が中途で入社して一番驚いたのは、上述までの非効率だが皆がすでに知っていることを改善する活動も、意思もなく、毎日毎日辛い思いをしながら郵便を配っていることであった。
社員は愚痴をこぼす。「この会社は泥船だ」と。
ならば辞めてしまえとしか言いようがない。
まとめ
ハローワーク等でも求人がありますが、郵便局は、少なくとも配達や収集の部門には基本的に近づかない方がいいです。