なぜ医学部受験への迷いが生じたのか

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前回の自身の考えの振り返り(なぜ医学部を志望し始めたのか思い出すだけの回)に引き続き、なぜ医学部受験という進路に迷いが生じたのかについてまとめる。前回同様、合格できる学力を備えてから記載すべきとも思うが、現状私が受験勉強を継続しつつ迷っているように、今後の受験生(特に社会人受験生)が目標に走りながら目標に迷うこともあるだろうから、1サンプルとしてお読みいただければ幸いである。

前回は自身の興味について記載し、個人的には夢が溢れる内容であったが、今回は現実的な話を記載するため、暗い気持ちになる可能性があることはご了承いただきたい。

迷いの要因は「時間」と「立地」

迷いが生じた要因を分解すると時間と立地にあると思う。

時間・年齢

新卒で入った会社を退職した時はすでに26歳

進路に迷う時にいつも考えることだが、我々は漠然と何かを成し遂げたいと思うとき、それに掛かる「時間」を費用・コストとして無意識に計算していると思う。

少々自己紹介的に経緯を挟むと、私は工業高校を卒業し就職した会社で貯金をしつつ、その社内の業務のスケジュールや企業の経営的な計画を鑑みて、このタイミングしかないというタイミングで退職させていただいた。その時の年齢はすでに26歳であった。もっとも最初の計画では22歳ですでに300万ほどの貯金があったことから、その時に退職するつもりであった。しかし、本社に飛ばされ異動になってしまったので、一旦は大人の態度をみせ、そこでの業務を頑張った。

退職からのこと

退職した26歳時点から1年ほど勉強し、医学部合格を掴み取るつもりだったが失敗に終わった。

もちろんセンター試験200点300点台の正真正銘の初学から合格圏内に滑り込むのは相当の勉強量が必要だが、この時の判断はこれでよかったと考えている。なぜなら、センター試験が最後の年であったからである。そこで失敗したのは単純に自身の勉強習慣が無いところから先んじて退職してしまったためで、それは退職を決めたタイミングから勉強していなかったことにそもそもの原因があり、大学受験を目指しての退職自体が悪いわけではないと考える。

この記事を書いている現在31歳で1月には32歳

医学部に進学するという進路に迷いが生じたのは言うまでもなくその年齢にも要因がある。

「紆余曲折あり」と言えば聞こえはいいが、結局は貯金が尽きて肉体労働のアルバイトや飲食アルバイトをやり精神的に疲弊し、あっという間に5年もの月日が流れてしまった。自業自得だが、ホームレスにもなって経歴がめちゃくちゃになってしまった。笑

野宿入門問題精講

私が仮に今、受験を一回失敗しただけの27歳であったなら、迷いもなく医学部進学を目指し勉強を継続するであろうが、上記の経験から、私は地方でアルバイトだけで生活を維持することの困難さに、薄々気づいてしまった。とすると、都心部の医学部を目指すことになるが、それは学力的に現実的ではないだろう。

学生生活を維持できるか、という不安

ここで私が一度でも大学生を経験していれば、その生活を想像することができるが、そうではない高卒であるため、医学部生活の6年間もの間、アルバイトで生活を繋ぐことの不安と働き始めてお給料が貰えるまで6-8年ほど掛かることを想像すると、正直心が折れた。このブログもゆくゆくは学生生活中に肉体労働以外の収入源として確保しておきたいので書いている部分もある。

特に過去の経験で失敗したのは、貯金だけを考慮して退職し学生をはじめとする無職状態になると、前年所得に課税される仕組みから翌年の貯金の減りが異常に早いということである。平気で100万円くらいはすぐに飛んで行ってしまう。つまり、一度就職等で働いてそれなりの所得を得てしまうと、その後にいくらいい大学に入ったとしても、稼ぎ続けなければならないのである。

周囲の大学生を経験したことのある人間からは、「地方でも家庭教師のバイトをやればいいよ」とも言われるが、30代半ばから後半の家庭教師というのは、もはや現実的には軽い犯罪の領域に達しているのではないか。下手すると親御さんより年齢が上の可能性が生じてはこないだろうか。そんなことを考えてしまう性分である。

立地の問題

さらに迷いが生じるきっかけとなったのが、住む地域の重要性について気づいたことである。

上記の自己の経歴の中で高卒で就職してから後に宅浪を始めたことを述べたが、新卒で入社した企業は東京都内の企業であったため、要するに18歳時点から東京都にしか住んでおらず、地方に住んで働くという経験をしたことがなかった。

地方に移住してみると

ホームレスの経験のあと、両親の助言もあり一旦は実家に住み着いて働きまた貯金を開始したのであるが、この地方での生活がかなりきついのである。冬は雪で道路に壁ができる、あいさつはあまり返されない、若者が少なく陰鬱な雰囲気が街を包んでいる、自動車がほぼ現実的に必要になる。そしてお給料が安い。さらに付け加えるならば、東京で賃貸を借りて生活するのと、地方で灯油や自動車のガソリンを買い生活するのとは、実質的にコストが変わらないことにも気づいた。つまるところ、地方で時給が安いことに関し心の底から納得できるような理由がいまいち見つからないにも関わらず、時給が安いという地獄のような現実がある。笑

別に東京・都会風を吹かせたいわけではない。都内で時給が1,500円の仕事と同じ仕事が地方では1,050円とかでやらされ、そして生活費に大した違いはないということだ。

地方医に進学する社会人がみなさん優秀な件

私個人としては、所謂「コスパがいい医学部」と言われる地方の医学部は、確かに入試難易度とその後「医師」という免許が手に入れば東大理三を出た医師と同じ働き方ができることなど、コスパの良さにはぐうの音も出ないほど納得であるが、その地域に6年間も住まなければならないとなると、かなり慎重に吟味しなければならないという強い思いがある。

社会人で地方医に合格し進学した方のブログ等を読むと、元々エンジニアであったり、配偶者が居て貯蓄には困らなかったりと、金銭的な不安をあまり抱えていないことは特筆すべきことであろう。つまり、インターネットでお金を稼ぐスキルがあるか、元々貯蓄があるか、という方が非常に多い印象を受ける。肉体労働以外に生活費を稼ぐ方法のない高卒の私が同じ夢をみてはいけないとも思ってしまう。

特に現役で医学部に入った人間はその学生期間の金銭的不安をすっ飛ばして、医師になれば収入が高いことを声高に叫んでいる印象を受ける。それは紛れもない事実なのだろうが、それは前年に大きな所得があり学生になる社会人受験生との差異を如実に表すものであるとも思う。地方の医学部に行って国民健康保険料を滞納する元社会人医学生が爆誕する未来しか見えないのは笑えるであろう。

補足

医学部再受験をはじめとして年齢的な問題は常に付きまとうものと思われる。上記でそれにも触れたので、自身の考えを補足する。

高齢受験生について

私は上記で自身が学生生活を維持できるか?という観点で不安を感じていることを記載したが、高齢で医師として働けるのか、また医師として働ける期間が現役生より短いことに関しては、あまり不安を感じていない。

社会人経験があれば理解できると思うが、社内で希望の部署に希望通り配属され、または異動辞令がなされる会社など、ほぼないであろう。

しかし、医師に関しては医師免許があれば、自身の興味や関心、並びに適性に従って、診療科を選択できるものと考えている。そして、それにより例えば小児科や血液内科など、若い患者さんが多い診療科で医師として働くことで、十分に社会に還元できるだけの可能性、またその選択性があると思っている。そしてそれこそが収入の安定や高低に惑わされず、尊いことなのではないかと考えています。

東大の眩しさ

つづく。