宅浪が病む原因の考察
今日は個人的に宅浪や受験生が病みがちな秋の訪れを感じておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
この記事では宅浪や受験生が精神を病む原因について考察してみたいと思います。また、最後には加えて社会人受験生としての病みポイントも記載します。以前書いた記事の復元に加筆修正を加えたもののため、一度読んだ記憶がある方はスミマセン。
かくいう私も2019年に一度会社を退職して宅浪で医学部受験に挑戦し、箸にも棒にもかからず見事散った人間なので、それなりの信憑性はあろうかと存じます。
私の宅浪経験
この部分は自己紹介的なものなので、読み飛ばしてもらって構いません。
私は2018年の年末に新卒(高卒就職)で入社した会社を退職し、貯金もそこそこあったので意気揚々と宅浪を開始しました。「1日12時間は必ず勉強するぞ」と意気込み、一番最初に始めたのは英単語のターゲット1900でした。確かすでにスマホやiPad用のアプリケーションが出ていて、それを使用して順調に終わらせ、次に取り組んだのは数学と英文法でした。(2019年1月はぶっちゃけ引き継ぎが甘かった部分について、後任の社員にリモートで指示するようなことをやっており、ほとんど心が落ち着きませんでした。)
私は工業高校卒であるため、数学は三角関数すら学校で習ってないぞという状況で、一番最初には長岡先生のCD付きの数学の教科書と白チャートを購入し、それを聞きながらひたすらその教科書の練習問題を解くという日々でした。この時期は2-3月で来年はセンター試験が最後だから800点は取るぞと意気込んでいた時でした。それが如何に無謀な試みかも知らずに…
雲行きが怪しくなってきたのはちょうど数学Bの数列に差し掛かった時です。初めて、何言ってるかよくわからないという経験をしました。この辺りで、考えては休み考えては休みという、休む習慣が付いてしまいました。そして、数学Ⅲの独学に向かいます。数列は何とか理解したので、極限や微分は理解できますが、部分積分や置換積分でまたしても何言っているのかわからないという状況になりました。
そして、この時期にはすでに数ヶ月間誰とも話しておらず、一言会話があるとすれば、近所のローソンの外国人店員さんに言う「Lチキ1つください」だけでした。もうすでに精神がおかしくなっていました。この時期5-6月でした。その後はセミナー物理やキャンベル生物学を解いたり読んだりしましたが、ほぼ身につきませんでした。
その後も勉強は継続しましたが、問題を解けるようになるレベルには到底達せず、理科も物理と生物というわけのわからない選択をしていたので、気体の状態方程式など重複している部分もなく効率化もできず見事散りました。二次試験すら受けずに飯田橋のハローワークに行き、誕生日を祝われました。おそらくこんな宅浪は世界で私だけだと思った瞬間でした。
構造と機能について
これは私が宅浪時に読んで救われた本の著者である、養老孟司先生(最近はメディアが注目しており私も好みませんが1980年代に書かれた本はまじで賢いです)がよく主張していることの受け売りになりますが、精神を病むという状況の裏には、何らかの構造の変化があると考えています。そして、精神や意識とは、脳神経細胞の塊という構造に対応する、機能であると考え論を進めます。まずはそこを説明してみます。
ポールワイスの思考実験
有名な一例を紹介します。ポールワイスという生物学者は以下のような思考実験をしました。思考実験の実験材料はニワトリの胎児です。ニワトリの胎児を菅瓶に入れ、ホモジェナイザーですり潰します。これにより、ニワトリの胎児がすり潰された溶液を得ます。
思考実験は以下の2要素で行われます。
(A)すり潰されていないニワトリの胎児
(B)ホモジェナイザーですり潰されたニワトリの胎児の溶液
さて、ここで(A)-(B)を考えるのですが、ニワトリの胎児をすり潰した溶液の中で、ニワトリの胎児の物質から何か失われたものはあるでしょうか?
もちろん失われた物質は何もないはずです。しかし、我々人間はここでは何かが失われていることに明確に気づくでしょう。ポールワイスは、これを「有機的編制(バイオロジカル・オーガニゼーション)」と名付けました。すなわち、あらゆる分子の空間的配置を含む、編制が失われたと定義したのです。
さて、この有機的編制を仮に「構造」だと呼んでみましょう。すると、分子の空間的配置を主として、各構成分子間の様々な「関係」が構造の基本性質であるとわかります。
そして、さらに上記の思考実験でもう一つ失われたものがあると気づくでしょうか?すり潰された状態では、構造のみならず、あらゆる「機能」も消失しているということです。すり潰されたニワトリの胎児では、呼吸や循環や生殖などの、本来ニワトリ胎児が持っていた、あるいは持ちうるはずの機能も失われています。
このことから、構造と機能が現実の盾の両面であるかも知れぬことをこの実験は如実に示しています。
ただし、この実験からでは、機能が構造を決定する例があるか否かはわからないことに注意が必要です。
構造と機能の具体例
少し分かり辛い部分があったかも知れないので、高校生物の例をもとに構造と機能についていくつか見てみます。
心臓という構造ー循環という機能
腎臓という構造ー濾過という機能
脳という構造ー心・精神・意識という機能
さらに細かいところでは、高校生物では腸にも絨毛があることを習うと思いますが、その役割、目的は栄養吸収のため「表面積を増やすこと」にあると習うと思います。つまり、機能とはそれが何のためにあるのか、という「目的論」ともとれます。そして、その機能には質量がありません。すなわち、我々の脳の中に存在する概念・解釈であって、地球上の外界では、構造が動いたり変化しているだけです。
何となく機能を説明してみましたが、これは私個人の読書経験他からくる妄想であって正しいかはわかりかねます。さらに面白いお話として、上記の構造と機能という2面性がなぜ発生するのかという点については、また別の記事で書きたいと思います。
この項のまとめとして、東大生物2007の第一問の心臓に関する問題はまさに「構造と機能を問う問題」なのでぜひ解いてみてください。
B 下線部(ウ)について。左心室を形成する壁はなぜ右心室を形成する壁に比べて厚いのか。その理由を1-2行で説明せよ。
C 下線部(エ)について。心臓のポンプ機能にどのような障害が生じると考えられるか。心臓内での血液の流れに着目して、以下の語句を用いて3行程度で答えよ。ただし、解答には全ての語句を少なくとも1回は用いること。
(語句)全身の臓器、右心室内圧、左心室内圧、血液、体循環、肺循環
宅浪が病む原因
さて、上記まで長々と前置きしてきましたが、宅浪が病む原因はズバリ構造、すなわち、脳の神経細胞の衰退・衰弱にあると私は考えております。
意識の生物学的意味
私が上記の自己紹介の通り宅浪開始から約5-6ヶ月で病んだ(うつと診断されてはいない)後、メンタル回復のため色々な本を読みましたが、その中でこれだ!というものを見つけました。
その著者は人間の意識、すなわち精神というものがよく言われているように「外界の敵を認知し、臨機応変に対応するために意識が生まれた」とする外的な必然のみならず、人間が人間であるためになぜ意識が必要だったのかという言わば内的必然性・生物学的な意義について記していました。
意識・心というものの発生から人間はどのような生物学的利益あるいは影響を受けたのか。まず一つの生物学的事実として、神経細胞発生ののち、末梢を十分に支配しない神経細胞は間引かれるというものがあります。つまり、簡単、かつ、乱暴に言えば、使われない神経細胞は間引かれるということです。ただし、今のところこれは成長期に起こることで、浪人期の年齢で起こることかはわかりません。
もう一つ、ニューロン越えの変性というものがあり、たとえば知覚系の末梢の神経細胞、脊髄神経節細胞のようなものが退化してなくなると、その繊維を受けていた、つまり、そこからの刺激を受けていた神経細胞系が、次に退化するという現象についてもその著書では紹介されていました。私はそれを読んだ時、読書できる程度とはいえ病んでいたので、まさにこれでは無いかと確信してしまいました。
めちゃくちゃ簡単にいうと、入力がある程度以上落ちれば神経は退化するらしく、しかもそれは筋細胞でも同様に起こるらしいことを学びました。よくドラマ等で長年ベッドで点滴を受けていた方がいきなり起き上がるシーンがありますが、普通はあり得ないと予想できます。
意識の生物学的意義とは神経細胞自身が神経細胞に入力を与え合うことによって、その構造を維持しているのではないかということでした。また、ヒトのように進化の過程でこれほどまでに知能が発達し、脳が大きくなったにも関わらず、身体すなわち末梢の方は特別変わっていないことから、その裏付けのトリックとして、意識が発生した。と考えられるということでした。
さて、上記を踏まえ宅浪が病む原因は、少なくとも私の場合は以下の通りでした。
運動しない+人と会話しない+日光を浴びない+同じような勉強を継続する+そのうち勉強できなくなる+自己嫌悪に陥る
上記の一見複合的に見える要因によって、結局は勉強を辞めてしまう、すなわち、神経細胞を使わずにSNSやYoutubeなどを受動的に見ることによって神経細胞が退化・衰弱していること、そして、その構造の変化が同時的に機能不全すなわち健康なメンタルを維持できないという当たり前の話に繋がっているのではないかと推察、結論づけました。そのため、前置きで構造と機能について説明しました。
したがって、悲しい現実ですが、コロナなどで一度勉強の手が止まってしまった後に、鬱傾向になる方は多いのではないかと予想します。
対策
実は宅浪時に一度だけメンタルが回復したことを自覚した時期がありました。それは、センター試験の申し込みの時期になり、直接地元の母校まで卒業証明書を取りに行った時です。これは東京から地元まで移動したこともありますが、地元では地下鉄網が発達していないので、かなりの距離を歩きました。
そんなこと?と思われるかも知れませんが、上記の説が正しいとするならば、歩行によっても脳の、少なくとも小脳には、何らかの入力があるはずです。しかも、それによってメンタルが回復したと自覚した、ということは、上記の説がそこそこ正しいのではないかと信じるきっかけになりました。
かなりスピリチュアルなお話で申し訳ありませんが、上記の説が正しいと仮定して対策を考えると以下の通りになろうかと存じます。
・労働すること(勉強の邪魔にならない程度に)
・人と会話すること
・SNSは寧ろ消さなくていい(情報の入力源+孤独を防ぐ術であるから)
・日光を浴びること
・風呂に入ること
・歯を磨くこと
・散歩すること(身体を使うことを行うこと)
・コロナ対策をすること(外的要因によるメンタル低下を防ぐため)
上記の対策の目的は、あくまで神経細胞の維持にあるので、その目的と個人的に合致しないと考えたなら外せばいいと思います。
社会人受験生としての苦労とメンタル病む要因の紹介
社会人で苦労する部分と言えば労働時間が長いなどの苦労があるかと存じますが、それは上記の対策で述べた通り、精神を病むことを防止することに実は寄与している可能性があるので、除外して、その他の苦労ポイントを記載してみます。傷の舐め合いです、はい。
社会保険料高杉晋作問題
社会保険料が高いのはいうまでもなく、国の制度なので仕方ない部分はありますが、これから大学生に無事なれたとしても、宅浪や浪人の道を選ぶとしても、「前年所得に対する課税」からは逃れることができません。Twitterを見ていると、この辺を述べているor考えている方がほぼいないので個人的には注意喚起の意味もあります。いくら奨学金を受け取れたとしても、翌年無職になれば、前年の所得に対して課税され、健康保険料や住民税は必ず払わなければなりません。つまり、入学金や授業料だけを用意していたら、基本的には滞納か借金することになりかねない現実があります。
特に、会社を辞めて宅浪で医学部再受験を目指す方もいるかも知れませんが、所得にもよりますが貯金から60万くらいは国保と住民税だけで飛んでいくと考えておいた方がいいでしょう。国民年金もいれたらさらにすごい額になります。ちなみに前年所得500万ちょいの私の一月の税金は年金と任意継続の健康保険料だけで5万円超えており、ここに住民税も加わり死ぬかと思いました。これは、上記までの神経細胞の話を凌駕して、病むポイントです。焦燥感がやばいです。
いつまで浪人してんだ、出戻りしないかお誘い問題
これも一部の人に限られるでしょうが、特殊な技能を持っていて、向上心が溢れて大学を目指す社会人の方などは該当する可能性があります。
私個人的には、浪人だからと言って過去の関わりやSNS全消しなどはおすすめしない主義ですが、以前の職場の同僚から出戻りしないかと連絡をいただくことは多々あります。
こちらとしては行きたい大学に行くための勉強期間として退職していても、働いている人間からするといつまで遊んでるんだ、という意識を持たれても仕方ないかも知れません。これも、焦燥感に苛まれる原因の一つではあります。もちろん相手には悪気はなく、この解決法としては模試でいい成績を叩き出せばいいのですが、それがなかなか難しい場合もあります。病みポイントです。
まとめ
それでも志望校に向けて頑張るしかないです。それが神経細胞の維持にもメンタル安定にも繋がる唯一の方法なのです。